Skip to content

慢性的な頭痛からおさらばしたいなら(3)

今回は、慢性頭痛の自律神経要因の話です。頸椎性要因、筋緊張性要因については(2)を確認してください。

自律神経は、交感神経と副交感神経で構成されていて、交感神経は活動が高い時によく働き、副交感神経はリラックス時によく働くと言われています。二つの神経系がバランスを取りながら、その活動状況に応じてどちらを優位するか自動的に調整しています。

脳をバリバリに働かせる、運動をするという場合は、交感神経を優位にし、食事をする、休憩する時には副交感神経を優位にするわけです。一般的には、交感神経が優位になると、血管は収縮し、心拍出量は増大し、心拍数も上がり、筋は緊張が高まります。ただ、運動するときには、筋に酸素と糖を大量に供給しなくてはいけませんし、頭脳をバリバリに働かせる場合も同様です。したがって、筋と脳には、血管が収縮しすぎないようなメカニズムがあります。それは、血管平滑筋細胞には、レセプター(センサーみたいなもの)があり、酸素不足(二酸化炭素分圧が上昇するということ)になると、平滑筋を弛緩させ、血流を増やす仕組みです。これって賢いシステムですよね。全体としては血圧を上げ、必要としている組織にだけは、血流を増やすわけですから。

さて、こういううまいシステムですが、脳の血管が急激に拡張すると、痛みが発生することがあります。脳底の動脈や硬膜内を走る動脈は、痛みを伝えると報告されています。その痛みを伝える神経は、三叉神経といわれるもので、神経終末は硬膜、特に硬膜動脈周囲に密に分布してるようです。生化学的には、三叉神経終末からの神経ペプチドが痛みの増強に関与しているとかありますけど、専門家だけが関心をもつことなので、詳しいことは省略です。

頭蓋内の血管周囲から発生する痛みは、当然頭痛として感じられますし、動脈は、脈を打ちますから、痛みの種類としては拍動痛(ズキッ、ズキッ)と感じられる場合が多くなります。要は、片頭痛と呼ばれるものです。この痛みを伝える三叉神経の出所は、脳幹(中脳、橋、延髄で構成される脳の一番下の部分です)から上部頚髄にあり(三叉神経脊髄路核と正式にはいいます)。ここに痛みが伝えられ、そこから視床を介して大脳皮質に伝えられ、痛みとして認識されるわけです。

で、ここからが重要なんですが、自律神経の親玉(高位中枢)は、視床下部ですが、なんと頭痛を感知する三叉神経脊髄路核は、この視床下部の支配下にあります。視床下部のコントロールがうまくいかないと、過剰に痛みを感じることになります。そして、視床下部は、延髄にある心臓血管中枢を支配し(血圧ンコントロール)、呼吸中枢(換気を調整することで酸素濃度をコントロール)を支配し、まさに血管の収縮、拡張に影響を与えています。

さらに、さらに、視床下部は、情動(喜怒哀楽)の影響を受け、怒り、不安があれば、交感神経を興奮させ、楽しく、安心して、リラックスしていれば、副交感神経を働かせます。こういう情動をつかさどっている脳の部位はというと、大脳辺縁系と呼ばれる脳の中心部(内側部)にある領域(細かいこと言うと帯状回、海馬、偏桃体など)、さらには、前頭前野の底(眼窩に近いエリア、前頭眼窩野)などがあります。情動に基づき、視床下部を介して、心拍出量や心拍数に影響を与えているわけです。

ちょっと複雑なので、整理します。脳血管の急激な拡張は、頭痛を起こします。脳血管の拡張は、交感神経の興奮でおきる血管収縮に対する反応としておきます。血管収縮による局所の酸欠が血管拡張の引き金になるわけです。        自律神経をコントロールしている脳の部位は、いくつかあり、どこがくるっても、交感神経が異常興奮すれば、その後に頭痛が起きやすくなります。

さてさて、それに対して、どういう手立てがありますか?ですが、脳の働き、特に自律神経系のバランスをとります。私は、脳のバランスを崩す要因は、局所酸欠と入力信号の過剰・欠乏が主たるものと考えています。

酸欠は、血流と換気能力に依拠します。脳血流は、頸動脈(内外)、椎骨動脈とその枝分かれである頭蓋内の動脈ですから、頸椎変位とその周囲の筋緊張は、頭蓋内に流出入する血流を阻害しますし、脳髄膜(特に硬膜、くも膜)のひきつれは、頭蓋内圧の圧力分布に異常をきたし、頭蓋内血流に異常をきたし、局所酸欠を誘発します。換気能力は、直接的には、胸郭運動と横隔膜運動の影響を受けます。

脳への入力信号とは、重心の偏移、からだの歪みによって生じる筋や腱から脳へ上げられる情報(固有受容感覚)や視覚、聴覚、味覚、嗅覚などですが、こういうものの入力過多、過小、左右のアンバランスなどが、脳機能に局所的な異常を作り出します。

結論 脳の異常部位を見つけ、酸欠あるいは入力信号の偏りを是正することで、自律神経のバランスを取り、頭蓋内血管の反応性過剰拡張を抑えれば、自律神経要因の頭痛は改善します。

補足 勉強熱心な同業者に参考文献・サイトを挙げておきます。いくらでも検索すれば出てきますが、下記の論文で理解できない用語、概念があったらそこから調べていくのが効率的じゃないかなと思って。ただ、下記の論文はすべて神経内科や神経科学の研究者の論文ですから、この情報をどう利用するかが、カイロプラクターや鍼灸師にとっては必要なことでしょうね。

1)片頭痛の病態に関して                                                                          https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/060010020.pdf

2)視床下部ー三叉神経脊髄路核の連絡路についてhttps://www.jhsnet.net/zutu_topics_33.html  https://www.jneurosci.org/content/33/20/8827

3)大脳辺縁系についてー情動との関連でhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/sjpr/47/1/47_93/_pdf/-char/ja

Scroll To Top