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慢性的な頭痛からおさらばしたいなら(4)

今回は、慢性頭痛の4要因(頸椎性、筋緊張性、自律神経性、免疫性)のトリになる免疫性要因の話です。免疫システムが、複雑なだけ、どう説明したらわかりやすくなるか悩んだところがあります。難しい話をするのは、ある意味簡単で、世の中に出ている教科書や論文を、パクって説明すればいいだけですから。それでは、文献を羅列して、これで勉強してくださいとした方が、詳しく、かつ正確ですから、そっちの方がいいことになります。ですから、免疫の働きを踏まえたうえで、頭痛を引き起こす2つの病的状態について説明することにします。

1)潜在的ウイルスの弱い活動によって、頭痛が増強される状態。

つまり、免疫の機能異常(免疫力の低下)が、ウイルスの潜在的活性化を抑えられずに、三叉神経や後頭神経を過敏にして、頭痛を起きやすくしている現象がひとつめです。ウイルスの一部には、一旦感染すると、からだ内部にのこり、普段は冬眠(活動していない状態)していて、からだが弱ったときに活動しだすタイプのものがいます。ヘルペス系のウイルス(帯状疱疹ウイルスや単純ヘルペスウイルスなどです)がその典型です。こういうものが、本格的に活動すると、水疱をつくり、神経痛を起こさせますが、そうなると、慢性頭痛とは分類されません。そうではなく、じわじわと中途半端に活性化した時に、水疱もないし、ゲキレツでもないので、慢性頭痛を普段から持っている人であれば、今回の頭痛は、普段よりきついとされるわけです。一言で表現すると、ウイルスの潜在感染による頭痛増強現象です。論文としてこの現象が報告されているのは、私の知る限りでは、帯状疱疹ウイルス(HHV3)だけですが、体内には、常在ウイルスが39種以上(ヘルペス系ウイルスがかなり多い)あると最近報告されていますし、新型コロナウイルスの後遺症にかかわるウイルスがEBウイルス(ヘルペスウイルスの仲間)ではないかとの報告もありますから、帯状疱疹ウイルス以外にも可能性があるのではと私は思ってます。

2)炎症反応が必要以上に強くあるいは長びいてる状態。

頸椎性要因、筋緊張性要因、自律神経要因で生じた、関節、筋、神経などの炎症が、強くかつ長引くと頭痛は、なかなか治まらなくなります。炎症反応は、免疫細胞が、主役となり、炎症で損傷した組織を修復させる生体反応ですから、免疫細胞の活動をうまくコントロールできないと、上記のような状態になります。つまり、免疫に関与する細胞(好中球、マクロファージをなど)が、順序だって活動することで、組織が修復され、炎症(発赤、腫れ、発熱、痛み)は治まるわけですが、こうならない状態です。

では、なぜ、炎症が収まらないのでしょうか?それは、免疫をコントロールしている自律神経、ホルモンのコントロールがうまく行ってないのが原因です。非常にざっくりいうと、交感神経が優位になっている状態が続くと、炎症は治まりにくくなります。その理由を簡単に説明すると、交感神経が優位になると、末梢での好中球が増えることで炎症反応(初期の発赤、腫れ、発熱、痛み)が活発になります。それに対して、副交感神経(迷走神経)が優位になると、末梢での好中球が減るとともに、マクロファージに炎症を抑制させる化学物質(サイトカインと呼ばれる生理活性物質のひとつ)を放出させ、壊れた組織を処理し、炎症反応を終了させる方向に導きます。

そして、交感神経も迷走神経(副交感神経)も、視床下部に制御されていますから、視床下部によって免疫系もコントロールされていることになります。もう一つ大事なことは、視床下部は、下垂体-副腎髄質を介してアドレナリン(交感神経が分泌する物質と同じ)を放出させることで、交感神経を活性化させる一方で、下垂体ー副腎皮質を介して副腎皮質ホルモンも放出させます。副腎皮質ホルモンは、免疫を抑制する、つまり炎症反応を抑制する働きがありますから、下垂体は、炎症反応の活性化と抑制をうまくコントロールしていることになります。

まとめ                                かなり難しい話になってしまったかもしれませんので、簡潔にまとめてみます。交感神経が働きすぎると、炎症が収まりにくいので、副交感神経の働きを高め、交感神経を抑制することで、頭痛を改善させることができます。免疫性要因の頭痛の説明でした。

治療する場合は、視床下部を中心に自律神経の働きに関与する脳の部位を検査し、内分泌(ホルモン)腺である下垂体、副腎の働きを検査し、異常を見つけたらそこを改善させるような調整を加えることになります。

補足)炎症、免疫反応についてもうちょっと知りたい方のために。                 組織が損傷されると、損傷された細胞あるいは免疫細胞から化学物質(ヒスタミン、プロスタグランジン、サイトカインといわれる生理活性物質)が放出され、血管が拡張し(血流を増やし、免疫細胞を集める=炎症時の発赤の原因)、血管透過性を高め(免疫細胞が血管外の損傷組織の処理に出張できるように門を開ける=浮腫みの原因)、壊れた組織が、好中球、マクロファージなどの食作用で処理され、その後、組織の修復を促すサイトカインが放出されることで、炎症が終了します。炎症反応は、まさに免疫細胞が、担っているわけです。この過程が、スムーズにいくためには、サイトカインの放出されるタイミングと量と期間です。いつまでも、サイトカインの放出が続くと炎症がおわりません。話は、それますが、コロナウイルスで、肺炎が重症化する免疫の暴走(サイトカインストームという現象)とは、まさにサイトカインが、いつまでも大量に放出されることで生じる炎症の終わらない状態です。

同業者のための免疫・炎症に関する情報

1)サイトカインの種類と役割についてhttps://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/cell-analysis/cell-analysis-learning-center/immunology-at-work/proinflammatory-cytokines-overview.html

2)多くのウイルスは体内に常在しているhttps://www.amed.go.jp/news/release_20200604.html

3)交感神経系による免疫細胞の動態の制御http://leading.lifesciencedb.jp/4-e011

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